食物アレルギー「食べながら、おいしく治す方法は?」

アレルギー科

高里 良宏/アレルギー科医長

子どもの食物アレルギーの多くは、小学校入学くらいまでに自然に治っていきます。赤ちゃんのときから始まる鶏卵、牛乳、小麦、大豆アレルギーなどは、6歳までに70〜90%が食べられるようになります。

しかし、血液検査の値が高い、強い症状を経験している、微量でも症状が誘発されるなど、重い食物アレルギーの方は、自然には治りにくい経過をたどります。また、ピーナッツ、クルミ、カシューナッツ、ソバなど、自然に治っていくことが期待しにくい食べものもあります。

アレルギー科は、そうした治りにくい食物アレルギーのお子さんがたくさん受診し、積極的に治すことをめざした治療に取り組んでいます。

この記事の内容

食物アレルギーは、治せますか?

食物アレルギーの治療の原則は、症状が出ない量を見極めたうえで、「食べられる範囲を食べる」ことです。

アレルギー科では、実際に原因食物を食べて症状を確認する「食物経口負荷試験」でアレルギーの重症度を正確に診断し、「食事指導」と「経口免疫療法」を組み合わせた治療を行っています。

原因食物を、どうやって食べていったらよいですか?

「食事指導」とは、ある程度の量(卵は1/8〜1/2個、牛乳は10〜50mL、小麦はうどんで10〜50g程度)で、軽い症状が出る程度のお子さんが対象です。食べる量を正確に計量して、計画的に摂取を続けながら、管理栄養士が具体的な料理法や加工食品を紹介していきます(図)。

わかりやすい資料を使って、栄養士が指導を行います
(出典:伊藤浩明監修『おいしく治す食物アレルギー攻略法 改訂第2 版』
認定NPO 法人アレルギー支援ネットワーク、2018 年)
図 わかりやすい資料を使って、栄養士が指導を行います
(出典:伊藤浩明監修『おいしく治す食物アレルギー攻略法 改訂第2 版』
認定NPO 法人アレルギー支援ネットワーク、2018 年)

食べる量の増やし方には、病院内で食物経口負荷試験を繰り返し行う方法と、自宅で少しずつ増量する方法があります。順調に進めば、自然に治るのを待つよりも早く、2〜3年で普通に食べられるようになります。

重い食物アレルギーでも、治せるの?

より重症な方が、食物アレルギーを克服するために挑戦するのが「経口免疫療法」です。原因食物をごくわずか(0・1g程度)から計画的に食べ始めて、ゆっくり増量していきます。厳密なプロトコール(治療計画)に従って摂取を進める、研究的な治療となります。

安全に最善の注意を払いながら治療を進めるために、合併する喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎のコントロールも大事ですので、看護師と連携して指導を行っていきます。最初から自宅で進める方法と、治療の初期に2週間ほど入院して最も危険な時期を乗り越える方法があります。

食べられる量が増えてきたら食事指導に移行しますが、体調の悪いときや食べた後の運動で症状が起きることもあるため、量が増えても油断せず、3〜5年くらいの時間をかけて、慎重に食べ進めていきます。

でも、子どもがなかなか食べてくれません

食物アレルギーの治療のゴールは、「症状が出る心配をすることなく、自由に食事を楽しむ」ことです。しかし、卵や牛乳、小麦を食べたことのないお子さんが、ケーキやアイスクリームを最初から「好き」と思っているとは限りません。むしろ多くの方は、過去に経験した辛い誘発症状の記憶から、原因食物を食べていくことに怖さを感じ、なかなか安心して「おいしい」とは思えないようです。

食物アレルギーの治療には、「おいしく食べていくための心のリハビリテーション」も必要です。そのために指導の中では、原則的な方法を示しながらも、「こわい」「まずい」「きらい」というお子さんや保護者の気持ち、調理の知識やスキルに寄り添って、お子さん自身が治っていける見通しを持てることを大切にしています。「〇〇を食べられるようになりたい!」というお子さんの希望が、治療を進める一番の力になります。

アレルギー科では、小児アレルギーエデュケーターの資格を持つ管理栄養士や看護師がチームを組んで、治療にあたっています(写真1、2)。

アトピー性皮膚炎に対する実践的な指導を、看護師主導で行います
写真1 アトピー性皮膚炎に対する実践的な指導を、看護師主導で行います
栄養士が開くアレルギー除去食の親子料理教室も好評です
写真2 栄養士が開くアレルギー除去食の親子料理教室も好評です

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、じんましん、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎、新生児・乳児消化管アレルギー、食物誘発胃腸炎、ラテックスアレルギー、薬物アレルギー、アナフィラキシー

当科の特色

  • 当センターは、愛知県のアレルギー疾患医療拠点病院です。また、アレルギー専門研修基幹施設に認定され、専門医を志す医師が全国から集まって、切磋琢磨しています。
  •  年間1,000 件超の食物経口負荷試験を行い、食物アレルギーに対する経口免疫療法に注力しています。
  •  最新の治療を行うための臨床研究も積極的に行い、毎年数十の論文を発表し、多数の学会発表、講演を行っています。
  • 認定NPO 法人アレルギー支援ネットワークとも共同して、患者さんや家族、地域住民への情報提供も行っています。
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