思春期早発症・遅発症「思春期が早い?遅い?治療が必要なの?」

内分泌代謝科

濱島崇/内科部長

この記事の内容

思春期が早いとは?何が問題なの? 治療は?

思春期で最初に表れる体の変化は何でしょうか?通常、女児では乳房や乳頭部の膨らみが出てくること、男児では睾丸(こうがん)(医学的には精巣といいます)が大きくなってくることが最初の変化であり、女児では平均9歳半頃、男児では平均11歳半頃から認められます。思春期が進んでくると、成長率の亢進(身長の急激な伸び)、にきび、陰毛や腋毛、体臭の変化などが認められ、初潮(12歳頃)や声変わり(13歳頃)は思春期に入って1〜2年経過してから認められることが多いです。

思春期の体の変化を医学的には二次性徴といい、二次性徴は性ホルモン(女性ホルモンや男性ホルモン)が増加することによって生じます。二次性徴が平均より2年ほど早い場合に、思春期早発症と診断されます。思春期早発症は女児の方が多く、家族歴(両親や兄弟も早い)があることもよくあります。

では、思春期が早いと何が問題なのでしょうか?当科では、以下の3点が重要と考えています。①腫瘍(しゅよう)が原因の思春期早発症があること、②子どもの精神面への影響、③将来的に低身長となる可能性があること。以下、これらについて順番に考えてみましょう。

①思春期早発症の大多数は特発性(原因不明)ですが、男児、発症年齢が極端に若いとき(6歳以下など)、二次性徴の進み方が急速なときなどでは、腫瘍の存在を否定しておくことが重要です。②に関しては、個人差があるため症例ごとに確認していく必要があります。③一般的に成人身長は、思春期が遅めのほうが高くなります。思春期早発では身長が早く伸びて早く止まるため、最終的に低身長となることがあります。

ほとんどの思春期早発症は、治療をすることによって二次性徴が進むことを止めることができます。しかし、治療をしても無治療の場合と比べて、必ずしも成人身長が高くなるわけではありません。成人身長を高くすることを目的に治療を受けたいという場合には、本当に効果が得られる可能性が高いのか、本人、家族とよく相談して治療を決定しています。

思春期早発症の治療では、性ホルモンの分泌を抑制する薬を4週ごとに皮下注射します。この治療を継続している間は二次性徴の進行は止まり、月経も止まります。治療期間は、女児では5年生(11歳頃)まで、男児では小学生の間くらいまで続けることが多いです。

治療を受けるかどうかを考えるうえで一番重要なことは、何を目的に治療を行うかということです。新たな二次性徴の出現や月経を止めたいのか、最終身長を高くしたいのか、主治医の先生とよく相談して治療を受けるかどうかを決めていくとよいと思います。

思春期が遅いとは?何が問題なの? 治療は?

思春期はどれくらい遅いと注意する必要があるのでしょうか?一般的には、女児で13歳、男児で14歳になってもまったく二次性徴が認められない場合に、思春期遅発と考えられています。思春期遅発も思春期早発と同様に家族歴があることが多いのですが、男女比は早発とは逆で男児のほうに多い傾向があります。

思春期遅発の多くは体質性のもので、病気ではなく、待っていれば自然に思春期が発来します。しかし、脳下垂体(のうかすいたい)や性腺機能に問題がある場合は性腺機能低下症という病気であり、通常は治療が必要となります。

また、思春期遅発に嗅覚障害(臭いがわかりにくい)を伴う場合は、カルマン症候群という病気の可能性があり、精査が必要です。過度な運動や極端な体重減少などでも、思春期遅発となることがあります。この場合は、運動負荷の軽減や、体重の回復により思春期は自然に発来してきます。

思春期が遅いことによる問題点には、二次性徴が発来しないことによる精神的負担、低身長、骨粗しょう症などがあります。思春期遅発では身長増加のスパート時期が同級生より遅くなるため、小学校高学年から中学生の頃に低身長を主訴に病院を受診する方が多くいます。

体質性の思春期遅発では、通常、治療は必要ありませんが、体質性と性腺機能低下症の鑑別が非常に難しい場合もあり、専門医による慎重な判断が必要となります。

治療は、性腺機能低下症の場合は性ホルモンや性腺を刺激するホルモンの補充が必要となり、内服薬、貼付薬、注射薬などを、病態や希望に応じて選択していきます。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

成長障害(低身長、高身長)、思春期早発・遅発、DSD(性分化疾患)、性腺機能低下、CCS(小児がん治療後生存者)の内分泌障害、視床下部・下垂体機能障害、尿崩症、甲状腺疾患、骨・カルシウム代謝異常、副腎疾患、肥満、糖尿病、高脂血症など

当科の特色

  •  ほぼすべての小児内分泌疾患に対応しています。
  • 経験豊富な小児内分泌の専門医・指導医が2人在籍しており、最新かつ正しい診断・治療を受けることができます。
  •  DSD(性分化疾患)に対して多職種によるチームで診療しており、DSD 診療中核施設に認定されています(中部地区では2施設のみ)。
  • 肥満に対して、「アチェメック健康スクール」という多職種による診療プログラムを実施しています。
この記事をシェアする
この記事の内容