頭蓋骨縫合早期癒合症「頭のかたちが気になるのですが……」

脳神経外科

加藤 美穂子/脳神経外科 部長

この記事の内容

赤ちゃんの頭って丸くないの?

生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨(ずがいこつ)は、「骨」とはいっても、とても柔らかいものです。赤ちゃんが一定の姿勢を好むと、それに合わせて頭のかたちが変化します。いわゆる向き癖( 位置的頭蓋変形(いちてきずがいへんけい))です。

生まれたときには頭のかたちは気にならなくても、生後しばらくして向き癖が出てきて、徐々に頭のかたちが変わることが多いのですが、お母さんのお腹(なか)のなかで、すでに大好きなポジションができている赤ちゃんもいます。そのような赤ちゃんのご家族は、「生まれたときから頭のかたちが気になっていました」と話されます。

例えば双子の場合、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが動くことのできるスペースが制限されます。同じ姿勢でいる時間が長くなり、お腹の中ですでに向き癖ができているわけです。

頭のかたちが丸くないと、将来、発達に問題が出てきたり、頭痛や歯並びなどの問題が生じたりするのではないかと心配して受診されることも多いのですが、科学的にそれらとの関係が証明されているわけではありません。

大人の頭の形を想像してみてください。個性がありませんか?もちろん、強い変形があるときで、かつ病気による変形ではない場合は、頭蓋形状誘導療法(ヘルメット治療、保険適用外)を行ってもよいかもしれません(写真)。

ヘルメット治療中の様子
写真 ヘルメット治療中の様子

向き癖があります。どうしたらよいですか?

さまざまな枕やおもちゃの位置の工夫など、すでにいろいろ取り組んでいるにもかかわらず、赤ちゃんが同じ方向ばかり向いてしまうとお悩みのお母さんには、しっかりとしたポジショニングを行うよう説明しています。

枕で頭だけのポジショニングを整えるのではなく、肩や骨盤も入るようなポジショニングが必要です。その場合は、不意に赤ちゃんが寝返ったような姿勢にならないよう、必ずそばで見守ることが必要です。

頭のかたちの病気はありますか?

これまでたくさんの赤ちゃんが「頭のかたち」外来を受診しています。その中でわずか1%の赤ちゃんに病気が見つかりました。

赤ちゃんの頭蓋骨は「縫合線(ほうごうせん)」と呼ばれる骨のつなぎ目で成長していきます。この縫合線は大人になると誰でも癒ゆ 合ごうして見えなくなるのですが、脳がまだまだ大きくなろうとしている乳幼児期に癒合してしまう病気があります。「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)」という病気です。

頭蓋の変形だけではなく、頭蓋骨が大きくなれないために脳の成長が妨げられると、それに伴う症状が出てきます。発達障害や学習障害、頭痛や視力の低下などが生じます。極端に頭蓋形態が変形していることに、お子さん自身が強いコンプレックスを持ってしまう場合もあります。

病気のタイプや治療の時期(治療月齢/年齢)で手術方法が変わります。ご家族としっかり話し合い、乳幼児期の治療方針を決め、その後はお子さんが成長するまで外来で経過観察を続けます(図)。

「頭のかたち」外来受診者:1,342 人(2016~2021 年)→頭蓋骨縫合早期癒合症/ヘルメット装着診察のみ/歪み計測のみ
図 「頭のかたち」外来受診患者さんの傾向

その他には、生まれたときの頭血腫(ずけっしゅ)が大きくて、そのまま残ってしまう赤ちゃんもいます。ほとんどの赤ちゃんは外来で検査をしながら経過を見ていくと、乳児期半には本来の頭蓋骨の形になじんで気にならなくなりますが、なかには1歳を過ぎても、たんこぶのような変形が残ってしまうことがあります。そのようなお子さんでは、手術で治すことがあります。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

  • 先天性中枢神経疾患:水頭症、二分脊椎症(脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫)、頭蓋骨縫合早期癒合症、くも膜のう胞、キアリ奇形
  • 頭部外傷
  • 脳血管障害
  • 脳腫瘍(良性腫瘍に限ります)
  • 痙縮(脳性麻痺などによる手足の筋緊張)

当科の特色

  • 脳神経外科の中でも、小児を専門とする脳神経外科医が診療にあたっています。
  • 先天性中枢神経系疾患の診療については、東海地方の中心的施設です。
  • 小児を専門にする救命救急センターの脳神経外科として、頭部外傷や血管障害も積極的に受け入れています。
  • 脳腫瘍などでは、名古屋大学脳神経外科や関連病院と連携を取りながら、治療を行っています。
この記事をシェアする
この記事の内容