出生前検査とはなんですか?
お腹(なか)のなかにいる赤ちゃんが元気に産まれてくるかどうかを、どの妊婦さんも心配されているのではないでしょうか? 出生前検査とは、赤ちゃんが産まれる前に病気や異常があるかどうかを調べる検査のことです。一般的に出生前検査は、赤ちゃんの発育状況や形態異常をチェックする「胎児超音波検査」と、染色体疾患などの診断やリスクを判定する「遺伝学的検査」に分けることができます。
当センターでは、妊娠初期・中期・後期の胎児超音波検査を行っています。また、遺伝学的検査としては、羊水検査・母体血清マーカー検査(コンバインド検査、クアトロテスト)・NIPT( 無侵襲的(むしんしゅうてき)出生前遺伝学的検査)などが可能です(表)。
これらの検査をご希望の妊婦さんは、検査を受けるメリットやデメリット、さらに検査の限界などの説明を受け、必要な項目を選択することになります。
注意点は、産まれてくる赤ちゃんの3〜5%に何らかの異常が見つかるといわれており、そのすべてを出生前に知ることは不可能だということです。もちろん異常といっても、経過観察可能な病気も含まれていますが、産まれてからすぐに治療が必要な病気もあります。
出生前検査をするメリットとして、妊娠中に赤ちゃんの病気がわかった場合、産まれてからの治療やサポート体制を事前に準備することができます。逆に、検査をすることで悩みが増えることもあります。そのため、検査を受ける前に、ご夫婦でお腹の赤ちゃんにどう向き合っていくかをしっかりと話し合っておくことが大切です。
出生前検査は受けた方がいいですか? 受ける時期は?
出生前検査を受けるかどうかは、ご夫婦の自由意志で決めていただいてかまいません。どの検査を受けたらよいかわからないという方は、主治医の先生と相談するか、当センターで遺伝カウンセリングを受けてから決めてもよいでしょう。
初期の胎児超音波検査とコンバインド検査は妊娠11〜13週まで、NIPTは妊娠10週以降、クアトロテストは妊娠15週以降、羊水検査は妊娠16週以降で行います。
検査の選択肢を残しておくためにも、遺伝カウンセリングは妊娠11~13週までに受けることをお勧めしています。中期の胎児超音波検査は妊娠19〜20週頃、後期の胎児超音波検査は妊娠28〜30週頃が適切な時期だと思います(表)。
大切な赤ちゃんの検査ですから、ご夫婦での来院をお勧めします(NIPTの遺伝カウンセリングはご夫婦での受診が必須です)。
妊婦健診で行う超音波検査でチェックできますか?
妊婦健診では毎回超音波検査をする施設が多いので、疑問に思われるのは当然かと思います。実は産科の超音波検査は、妊婦健診のときに行う「通常超音波検査」と、胎児の形態異常をチェックすることを目的とした「胎児超音波検査」に分けて考えることが多いです。
「通常超音波検査」では、主に赤ちゃんの推定体重を測ったり、胎位や羊水量を観察したりすることが目的となるので、ベテランの先生ほど数分でチェックが終わってしまうかもしれません。
「胎児超音波検査」は、妊婦全員を対象とした標準検査とは違い、赤ちゃんのかたちや血液の流れを細かくチェックしていくので、時間がかかります。かかりつけの施設で、「胎児超音波検査」を行っているのか聞いてみるとよいでしょう。
妊娠初期の胎児超音波検査では、赤ちゃんの首のむくみ(NT)を観察しますが、正しい判断のためには、医師がNT資格を持っていることが必要です(図)。
また、NIPTは日本医学会で診査を受けた認可施設(全国108施設、2021年2月現在)で検査可能です。認可施設では、遺伝医療に精通した専門家が在籍しており、丁寧な遺伝カウンセリングや心理的なケアを含めたサポートを受けることができます。
診療科紹介
当科で扱う主な対象と疾患
- 病気をもつ胎児の母親である妊婦さん
- 出生前検査・診断、遺伝カウンセリングを希望する妊婦さん
- 出生後に専門的治療を必要とする病気をもつ胎児
- 先天性心疾患、口唇口蓋裂、腎泌尿器系疾患、骨系統疾患
- 消化管閉鎖などの新生児外科領域の疾患
- 二分脊椎症、水頭症などの脳神経外科領域の疾患
当科の特色
- お腹の中の赤ちゃんに、何らかの病気が疑われた妊婦さんの診療を行います。
- 赤ちゃんの病気に不安を持つ妊婦さんに対して、遺伝カウンセリングおよび出生前診断を行っています。
- 当センターNICU へ搬送された新生児のお母さんも、一緒に受け入れ可能です。
- 周辺市町村と連携して、産後ケア入院を実施しています。
- 母乳育児支援に力を入れています。
- 妊娠中にお子さんを亡くした方への、心のケアを行っています(マロンの広場)。
- 助産院やクリニックと連携した、産科セミオープンシステムを実施しています。