子どもの難聴はどうやってわかるの? 検査の方法は?
年齢が小さい場合は、スピーカーから音を出してお子さんの反応を確認する、CORという聴力検査をします。お子さんの年齢、状態に合わせて検査をする必要があり、熟練した言語聴覚士が行います。CORで評価が十分できない場合は、ABR、ASSR(寝ている間に脳波でみる聴力検査)を加え、総合的に難聴の有無、程度を調べます。
現在は新生児聴覚スクリーニングが普及し、早期に診断されることが増えました。しかし、生後に起きる難聴もあります。成長とともに音への反応、言葉をみていき、きこえや言葉が心配な場合は、耳鼻科や1歳半・3歳児健診で相談しましょう。
難聴ってなぜ起きるの?どうすればいいの?
先天性難聴は1000人に1人と多く、原因は半数が遺伝子(体の設計図)によるといわれています。その他に先天性サイトメガロウイルス感染症など、外からの要因があります。当センターでは、難聴の遺伝子検査を行っています。血液をとって、日本人に多い難聴原因遺伝子の有無を調べます。原因がわかった場合は、難聴のメカニズムがわかり、今後の参考になります。
音には強さと高さがあり、強さをdB(デシベル)、高さをHz(ヘルツ)といいます。20dB以内が聞きとれれば正常、20〜40dBが軽度難聴、40〜70dB が中等度難聴、70dB〜90dBが高度難聴、90dB 以上が重度難聴です(図1)。
私たちがおしゃべりしている音の大きさは50〜60dB程度ですが、言葉を聞きとるためには低い音から高い音まで、40dBを聞きとる必要があります。左右差があっても、両耳合わせて40dB(小声程度の大きさ)以内が聞こえていれば、言葉の発達には影響しないレベルであるため、補聴器はせず定期的に聴力検査を行い、言葉の発達の経過をみます。
中等度以上の難聴である場合は補聴器を装用します。聴力の程度、聴力型に合わせて補聴器を調整し、検査を繰り返します。言語聴覚士とともにその管理を行っていきます。
補聴器ってどんな種類があるの? 補聴器と人工内耳の違いは?
通常、耳掛け型の補聴器を選択します。耳の穴がふさがっている場合などは、骨導型補聴器( 骨の伝導を使って音を伝える補聴器)を使います。
補聴器を装用しても十分に聞きとりが得られない重度難聴の場合は、人工内耳が適応となります。内耳に電極を埋め込む手術が必要で、この電極を通してきこえの神経(聴神経)に音を伝えます(図2〜4)。
(図2、3、4:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ホームページより転載、http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/naiji.html)
難聴自体が“治る”わけではないので、術後、調整(マッピング)のほか、音を聞き、コミュニケーション力を育てていく訓練を行う必要があります。特に子どもの場合は言葉の経験が少ないので、手術前後の支援体制を整えることが重要です。
当センターは、術前の補聴器調整からかかわり、手術・術後の訓練も一貫して行うことのできる数少ない施設です。
診療科紹介
当科で扱う主な疾患
難聴、中耳炎、先天性耳瘻孔、扁桃・アデノイド肥大、睡眠時無呼吸症候群など
当科の特色
- 一般の病院では難しい乳幼児の難聴診断を行います。
- さまざまな検査で聴力の評価を行って補聴器の必要性を判断し、言語聴覚科と連携して相談を進めます。
- 人工内耳の適応の相談も行っており、術前の補聴器調整から始まり、手術、術後の訓練を1つの病院で行えることが、最大の特色です。