成長とともに変化する二分脊椎と仲良くするために
二分脊椎(にぶんせきつい)は脊髄(せきずい)の病気で、症状は足や排泄(はいせつ)にかかわります。病気のタイプによって必要な治療や時期がさまざまです。神経担当の脳神経外科、足の専門家の整形外科、排泄を誰よりよく知っている泌尿器科、そしてリハビリやさまざまなケアを担当する看護師など、たくさんの専門家が一緒になってサポートします。ここでは治療の流れをご説明します。どんなことでも相談してみてください。
加藤 美穂子(かとう みほこ)/脳神経外科部長
皮膚・排泄ケア専門の WOC ナースが心がけていること
排尿(おむつ・導尿)や排便のケアは、毎日ずっと付きあうことになります。はじめは親が行いますが、その後は本人が主体的に行うことになります。成長に合わせて自分でケアができるように支えます。また神経・排泄・足などすべてのことが、自分自身のベストな方法だと自信が持てるように、ライフイベントに合わせて、専門チームでかかわります。
自分らしく楽しく過ごすことができるように、お手伝いします。
中山 薫(なかやま かおる)/看護師
1.胎児診断
胎児期に診断される二分脊椎は、一般に「脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)」と呼ばれるタイプです。背骨の中の脊髄が見えていて、そこから脳脊髄液が漏れています。また、脳の中心にある脳室が大きくなる「水頭症(すいとうしょう)」なども合併します。これらは新生児期から治療が必要になります。
二分脊椎は、妊婦健診の超音波検査で、水頭症の存在から発見されることが多い病気です。精密超音波検査と胎児MRI で病気を評価した後、産科と脳神経外科が一緒になって、胎児の状態や今後の治療についてお話をしていきます。
早川 博生(はやかわ ひろみ)/産科部長
2.新生児期から乳児期
「脊髄髄膜瘤」は、なるべく早く修復術を行います。その後は、「水頭症」や脳が首(頸髄(けいずい))へ少し飛び出す「キアリ奇形」などに注意します。脳脊髄液の漏れないタイプは「潜在性二分脊椎」や「脊髄脂肪腫(せきずいしぼうしゅ)」と呼ばれ、背中の膨らみなどで見つかります。多くは乳児期に手術をします。
手術前から手術後にかけて、呼吸・循環・栄養といった全身の管理や、CT・MRI といった検査のサポート、創(きず)の状態が悪化し感染などを起こさないようなケアを、看護師と協力して行います。また病気をもって生まれた赤ちゃんとご家族の関係を見守ることも、私たちの役割です。
森鼻 栄治(もりはな えいじ)/新生児科医長
3.手術
新生児期や乳児期に、最初の脊髄の手術や水頭症の手術をします。その後は成長とともに足の変形が起こったり、排尿に問題が起こったりしたときに、もう一度脊髄の手術をするほうがよいのか、整形外科や泌尿器科で手術をするほうがよいのか、医師が相談しながら治療を進めます。
心配はごもっともです。たしかに、生まれたての赤ちゃんの麻酔は簡単ではありませんが、私たちの手術室では、生まれたての赤ちゃんの麻酔経験が豊富にあります。長年積み重ねた経験を活かしつつ細心の注意を払って、安全に手術が実施できるように取り組んでいます。
宮津 光範(みやづ みつのり)/麻酔科医長 手術室長
4.外来管理
最初の治療が一段落すると、外来で経過をみていきます。脳神経外科、泌尿器科、整形外科のそれぞれに定期的な受診が必要です。おむつの時期、歩き始めたとき、トイレットトレーニングの頃、入園や入学のときなど、その時々で専門医に相談したいことが変わると思います。
超音波検査や膀胱(ぼうこう)造影・膀胱内圧測定を行って、適切な尿路管理を決定します。必要であれば、間欠導尿や内服薬を開始します。「腎機能の保護」「尿失禁のコントロール」「尿路管理の自立」を念頭に置いて、年齢に応じた管理を行っています。
久松 英治(ひさまつ えいじ)/泌尿器科医長
成長とともに足の変形が進行すると、歩くときにバランスがとりづらくなります。足に装着する道具(装具)を使って弱い筋力を補いつつ、足裏にできやすいキズ(タコなど)を予防します。変形が強い場合は手術を行います。
金子 浩史(かねこ ひろし)/整形外科医長
5.大きくなったら
二分脊椎は、成長期に症状が悪化することがあります。ですから、中高生の頃にも注意が必要です。高校卒業後は担当医と相談して、大人になってから通院できる病院に徐々に移行(成人移行)していきます。一人ひとりに合った、上手な病気との付き合い方を見つけられるよう応援します。