食べることで治せる時代に 最新の予防から治療まで「食物アレルギー」

アレルギー科

伊藤 浩明/あいち小児保健医療 総合センター長

食べるとアレルギーになるとされていた時代から、食べて治す時代へ。この20年で食物アレルギーの考え方は大きく変わりました。当センターでは最新の知識をもとに、小児アレルギー専門のチームが一人ひとりに合わせた診療を行っています。

この記事の内容

食物アレルギーとは?

皆さんは、好きな食べ物やお気に入りの外食のお店はありますか?

世の中には、好きな食べ物や外食をがまんしなければならない子どもたちがいます。食べ物に「アレルギー」がある子どもたちです。アレルギーがある食べ物を食べると、体がかゆくなったり、咳せきが出たりします。中には、アナフィラキシーという強い症状が出て、命がおびやかされることもあります。

例えば、牛乳にアレルギーがあると、ヨーグルトやチーズはもちろん、アイスクリーム、チョコレート、クッキー、ケーキ、パンも食べられません。外食のハンバーガーもです。カレーやラーメンに乳成分が入っていることもあります。

もしあなたが「明日からこれらを全部食べられません」といわれたら、どうでしょうか。

血液検査だけではわからない

アレルギーがあるかどうかを調べるために、病院では血液検査をします。でも、それだけでは正確にわかりません。血液検査で反応があっても、食べたら大丈夫な人もいて、その場合はアレルギーとはいいません。アレルギーがあっても、少しなら食べても大丈夫なこともあります。また、アレルギーと似ているけれど、違うしくみで起こる、間違いやすい病気もいくつかあります。

本当にアレルギーがあるか、どのぐらいまでなら食べられるかを知るために、病院では食べてみる検査(食物経口負荷試験といいます)をします。

日本にはどんな食物アレルギーが多いでしょうか。卵、牛乳、小麦の3つが多いことは、皆さんご存じかもしれません。

最近、クルミやカシューナッツ、ピスタチオなど、木の実のアレルギー(ナッツアレルギー)が急激に増えています。しかも、生まれて初めて食べて強いアレルギー症状を起こし、救急車で運ばれるお子さんも少なくありません。

木の実アレルギーは、専門の病院で詳しい血液検査をすれば、食物経口負荷試験をしなくても診断できることがあります。アレルギー科では、食物アレルギーのあるお子さんには積極的に検査をして、アナフィラキシーを起こさないようアドバイスしています(写真1)。

外来の様子。小児アレルギー専門のチームが、一人ひとりに合わせた診療を行っています
写真1 外来の様子。小児アレルギー専門のチームが、一人ひとりに合わせた診療を行っています

食物アレルギーにならないためには、どうしたらいい?

つい20年前まで、食物アレルギーは食べ物を食べたせいで始まる、と考えられていました。そのため、アレルギーになりやすい食べ物は、離乳食の中でも遅く始めましょう、と言われていました。ところが結果的に、アレルギーになる子どもは増え続けてきました。食べ物を避けることで、アレルギーは防げなかったのです。

では、食物アレルギーはどうして始まるのでしょう?

実は、赤ちゃんの皮膚に湿疹(しっしん)があると、食べ物の成分がそこから体の中に入ってきます。動物にとって、皮膚から入ってくるものはすべて悪者です。そこで、体を守るしくみ(免疫といいます)は、皮膚から入ってきた食べ物を排除しようとします。これが、アレルギーの始まりです。一方、口から食べた食べ物は体に必要な栄養になるので、免疫力が働くことなく、体に吸収されます。

そこで最近では、湿疹をきれいに治したうえで口から食べさせることで、食物アレルギーの予防をめざしています(図)。昔とは正反対ですね。

生後1 ~ 3 か月の間、毎日ミルク10mL 以上→牛乳アレルギーを予防 | 生後6 か月時の牛乳アレルギーの割合 毎日ミルク(10ml/日以上)→0.8%、ミルク除去→6.8% アレルギーを予防 スペード試験 ハートライフ病院 崎原徹裕先生、あいち小児保健医療総合センター 伊藤浩明 他
図 牛乳アレルギーの予防。当センターに在籍した医師の研究が、世界的な医学誌に掲載

食物アレルギーを治すためには、どうしたらいい?

食物アレルギーになってしまった人でも、その食べ物を少しずつ食べ続けて、免疫の「かんちがい」をゆっくり正してあげることで、食物アレルギーを治す方法があります。これを経口免疫療法といいます。食べるとアレルギーになるとされていた時代から、食べて治す時代になったのです。アレルギー科では、たくさんのお子さんが経口免疫療法に挑戦して、アレルギーを治そうと頑張っています。

詳しくはアレルギー科の記事で紹介していますので、ぜひ読んでみてください。

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