手術が必要な赤ちゃんを救いたい 専門家集団によるチーム医療「寄り添い育てる」NICU

新生児科・NICU

河井 悟/新生児科医長、吉田 美絵/NICU 師長

当センターNICUは、手術が必要な新生児の治療に特化した施設です。複数の診療科にわたり内科的・外科的治療が必要な新生児も少なくありません。私たちは多診療科・多職種で協力し、集中治療のみならず、家族ケアや在宅移行に取り組んでいます。

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出生前から始まる治療・家族ケア

近年は出生前診断の進歩により、生まれる前から診断される病気も増えてきました。病気のなかには、出生後直ちに外科治療を行わなければ救うことのできない病気も少なくありません。

私たちは出生前診断に基づき、産科および関連する診療科の医師と協力して、分娩方針の決定および出生後の治療方針について話し合います。そしてお母さん・お父さんに、病気の内容や必要な治療について、各診療科の医師より説明します。

出生後は、繰り返し手術が必要なことや、病状が安定せず長い期間の入院治療が必要なこともありますが、少しでも早く回復に向かうように、さまざまな診療科の医師・看護師のみならず、リハビリテーション部門とも協力して、ポジショニング(姿勢の調整)・赤ちゃんが過ごしやすい環境の調整・お口の特性に合わせた飲ませ方の支援など、小児医療の専門家が力を合わせて治療を行います。(写真1)

NICU(新生児集中治療室)の様子
写真1 NICU(新生児集中治療室)の様子

また、病気の赤ちゃんをもつご家族は大きな不安を抱えていることが多く、看護師を中心に臨床心理士とともにご家族に寄り添い、出生前から出生後にかけて切れ目のない支援ができるように心がけています。

病気の治療とともに「育てる」環境をつくる

NICUは「新生児の集中治療室」であり、重症な新生児を治療する場であることは言うまでもありませんが、それと同時に、生まれてから大きな成長を遂げる大切な時間を過ごす生活の場でもあります。

さまざまな薬剤を投与する点滴や、場合によっては人工呼吸が必要な状況でも、抱っこしてもらうなど、できるだけご家族と触れ合えるように工夫しています。

また、病状が許せば、お母さんに授乳してもらったり、お父さんに沐浴をしてもらったりといった「育児」を積極的に行っていただけるように協力します。なお、当センターNICUでは24時間面会が可能で、出産後すぐのお母さんが、仕事帰りのお父さんと一緒に面会に来ていただけるようにしています。

さらに、お兄ちゃん・お姉ちゃんたちとのかかわりも大切にし、さまざまな医療機器のある空間を怖がることのないように、保育士・HPS(ホスピタル・プレイ・スペシャリスト)と協力して環境づくりを行い、面会できるように工夫しています(写真2)。

きょうだい面会のための飾り付け
写真2 きょうだい面会のための飾り付け

このように、当センターのNICUは病気の治療を行うとともに、「家族形成」の場でもありたいと願っています。

ご家族からの希望を尊重し、それを叶えることができるように、各診療科・各部門と協力しながら、赤ちゃんとご家族が一緒に成長できる環境づくりに取り組んでいます。

在宅医療につなぐ橋渡し

さまざまな病気を抱えた子どもたちは、ミルクがうまく飲めなかったり、自分の力だけでは呼吸がうまくできなかったりすることも少なくありません。

しかし最近は医療の進歩により、さまざまな医療ケアを行うことで、病気とうまく付き合いながら、自宅で暮らせることも増えてきました。当センターNICUの卒業生には、チューブ栄養や気管切開をして人工呼吸器を着けていても、自宅で元気に過ごしている子どもたちもいます。

NICUでの集中治療を乗り越えた赤ちゃんたちとそのご家族が、安心して自宅に帰ることができるように、「こども・家族医療支援室」「保健部門」と協力して、自宅近くの病院や訪問看護ステーション、訪問診療医の先生と連携しサポートすることも私たちの役割です。

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