当センターは、東海3県では唯一、小児救命救急センターに指定されている医療機関です(2022年8月現在)。小児救命救急センターの子ども専用の集中治療室には、集中治療が必要な子どもたちが、日々、搬送されています。
集中治療が必要な重症な子どもたちは多いの?
救急を受診する子どもたちの多くは、軽症だといわれています。残念ながら亡くなってしまう子どもの人数も、大人と比べればとても少ないことも事実です。しかし、重症な子どもがまったくいないわけではありません。事故などによる大ケガや、突然の心停止などで運ばれる子どもたちもいますし、普通の風邪のような症状で発症し、体外式膜型人工肺( ECMO(エクモ))が必要となる劇症型心筋炎(げきしょうがたしんきんえん)になる子どももいます。
そのような重症な子どもたちを治療する場所が、小児集中治療室(PICU)です。PICUでは小児の集中治療を専門にする医師が中心となり、さまざまな子どもの専門領域の医師が協力して治療を行っています。当センターのPICUでは年間500人ほどの子どもたちの治療を行っています。
なぜ重症な子どもはあいち小児センターに搬送されるの?
重症な子どもの人数はとても少ないため、さまざまな医療機関で治療をしていては治療の成績が上がらないことが海外では知られています。また、治療する医師、看護師などの視点に立つと、重症な子どもを治療する機会が少ないため、経験を積むことが難しいです。特に子どものECMOなどは、充分な経験を積んだ医療機関で行うことが必要です。
そのため、拠点となる医療機関に重症な子どもたちを集め(集約化といいます)、医師、看護師、検査技師、臨床工学技士などを含めたチーム全体が、重症な小児へ対応できるプロフェッショナルとして治療をする体制が必要なのです。
集約化をするためには、初めに受診した病院から転院が必要になります。しかし、重症な子どもを別の医療機関から当センターへ搬送するのはリスクを伴うため、経験や人手が必要です。安全に搬送を行うため、転院は重症な子どもの搬送に慣れている、当センターの救急科が担当しています。
近くでないとPICUの治療を受けられないの?
当センターから近くなくても、搬送することでPICUでの治療を行うことができます。当センターの役割は、愛知県やその周りのすべての地域の子どもたちに最適、最良の医療を提供することだと考えます。それは、PICUでも同じです。では、遠く離れた場所にいる、重症な子どもはどうしたらよいのでしょうか。
当センターの救急科は、救急車などで直接受診した子どもたちの治療を行うとともに、遠くの医療機関で治療が開始された重症な子どもへも対応できるように準備をしています(写真1、2)。
愛知県では「小児重症患者相談システム」という、重症な小児の治療を同時に複数の医師で相談できるシステムを作っています(図)。
これは、県内の医療機関に搬送された重症な小児の治療をしている医師が、今後の集中治療の必要性などを、PICUや救急の医師と相談できるシステムです。
当センターの救急科は、このような相談を受け集中治療が必要だと判断された場合には、重症な子どもが収容された医療機関まで迎えに行くスキルと手段を持っています。ですので、当センターから離れた医療機関であっても、開始された治療を継続しながらPICUの治療へとつなぐことが可能です。
この地域の子どもたちが幸せになれるよう、小児救命救急センターのスタッフは24時間365日、準備を整えています。