治療のフロンティア・未来を拓く 小児心臓病センターで取り組む「小児補助人工心臓」

心臓血管外科

村山 弘臣/小児心臓病センター長、岡田 典隆/心臓血管外科医長

幼少児の心臓疾患の治療成績が向上した一方で、どうしても心臓移植でしか救えない命があります。当センターは、心臓移植待機中の小児患者さんに対し、東海地区初となる小児用補助人工心臓を用いた治療に取り組んでいます。

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小児用補助人工心臓とは?

心臓は、私たちが起きているときも寝ている間も、ずぅ〜っと休むことなく働き続ける、とてもパワフルな臓器です。ですが、何かの理由でそれがうまくいかなくなることがあります。心不全です。

薬の調節やカテーテル治療、手術などが有効なことがほとんどですが、中には、どうしても心臓移植でしか救えない命があります。そんなとき、少しずつ弱まっていく心臓を助けてあげる装置、それが小児用補助人工心臓(小児VAD)です。

適応となる心不全患者さんは、体に血液を送り出す心室の収縮が弱まり、拡張しています。ここにチューブを固定して、血液をポンプに誘導します。そして、もう1本のチューブでポンプと大動脈をつなぎ、体に向けて血液を送り出すことで心臓をサポートします(図1)。

小児補助人工心臓
図1 小児補助人工心臓

小児は体格が小さいため、ポンプを体内に格納することができません。そのため、体外設置型人工心臓と呼ぶこともあります(写真1)。

体外設置型血液ポンプ
写真1 体外設置型血液ポンプ

「小児補助人工心臓治療」を始めました

臓器移植は、善意に基づく臓器提供がなければ成立しない医療です。国内における小児の心臓移植は、2010年施行の「改正臓器移植法」によりその道が開かれ、着実に実績が積み重ねられています。全国で100人近い小児患者さんが心臓移植を待っており、このうち数十人のお子さんは補助人工心臓とともに生活しています。

私たちは、東海地区の期待に応える形で、数年かけて勉強と準備を重ね、小児用補助人工心臓システムを用いた治療をスタートしました(図2)。

小児補助人工心臓導入・実施施設(2021 年10 月現在)
図2 小児補助人工心臓導入・実施施設(2021 年10 月現在)

「小児心臓病センター」が総力をあげて取り組んでいます

補助人工心臓で治療を行うには、治療の両輪である内科と外科、すなわち循環器科と心臓外科の連携がとても大切です。私たちはこれに先行して、2019年春「小児心臓病センター」として、文字どおりワンチームにまとまりました。小児ハートチームの誕生です。1つの疾患に対して、それぞれの側面からアプローチし、協力し合いながら診療を行っています。

当センターには、胎児期から連続して心臓疾患を診療できる周産期部門と、東海地区有数のPICU(小児集中治療室)および東海地区初となる小児救命救急センターがあり、多くの小児専門の内科系、外科系診療科とともに包括的診療を行っています。

療養環境の面では、保育士とともにチャイルドライフにも配慮し、保健部門との連携も充実しています。このような環境のもと、センター一丸となって、小児補助人工心臓治療を行っています。

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