小児総合診療「総合診療科って、どんなことをしているの?」

総合診療科

鈴木 基正/総合診療科部長

この記事の内容

総合診療科の外来は、どのような人が受診するの?

さまざまな病気の患者さんが受診します(図)。

肺炎・気管支炎・中耳炎、発熱、発達遅滞、一過性意識障害後、嘔吐・下痢・胃腸炎、摂食障害・体重増加不良、頭痛 喘鳴・咳嗽、便秘・排便障害、起立性低血圧、腹痛、血便、皮疹、頸部リンパ節腫脹、〇〇症候群疑い、血液異常、チック、頸部痛・心窩部痛、むずむず脚症候群、皮下腫瘤
図 総合診療科外来の受診理由(2021年度前期)

最も多いのは、肺炎や気管支炎などの感染症です。主に、救急外来受診後の症状の確認のため受診されます。次に多い理由は発熱です。近くのクリニックから、熱が下がらない原因を細かく調べるために紹介されることが多いです。

すでにさまざまな検査をした方もいるため、まずはしっかり話を聞き、さらに必要な検査があるかや、当センターの各専門科へ紹介するべきかなどを判断します。診察の結果により、もともと通っていたクリニックで引き続き治療を継続してもらうこともあります。乳児健診などで発達の遅れを指摘されて、受診する方もいます。

総合診療科の仕事について、もっと教えて

総合診療科の仕事は多岐にわたりますが、その中から、2つの役割を紹介します。

抗菌薬適正使用の支援をしています

「薬剤耐性菌」をご存じですか?
文字通り、抗菌薬(抗生物質)が効きにくい細菌です。1942年以降、これまで多くの抗菌薬が開発されましたが、数年で耐性菌が出現するイタチごっこを繰り返し、2017年には、すべての抗菌薬が効かない菌でアメリカ人女性が亡くなりました。抗菌薬の開発は資金と時間がかかるため、新しい抗菌薬はあまり作られなくなり、2050年には、がんで亡くなる人より薬剤耐性菌で亡くなる人が多くなるという試算があります。

薬剤耐性菌は、なぜ増えるのでしょうか?
抗菌薬を使うと、抗菌薬が効く菌は死んで、抗菌薬が効かない菌(薬剤耐性菌)が生き残り、周りの菌がいなくなったため、たくさん分裂して増えます。抗菌薬は病気を起こす細菌を退治できる非常に便利な薬ですが、使い方によっては薬剤耐性菌を増やす「諸刃の剣」になります。

「風邪に抗菌薬は効きません!」という標語があります。風邪は「ウイルス」による感染症で、細菌を退治する抗菌薬は無効です。

抗菌薬は「どの細菌感染症に対して」「どの抗菌薬を」「誰に」「どのぐらいの量で」「何日間」と細かく決めて使うため、高い専門性が必要になります。当センターでは総合診療科内の感染症専門の医師が、重症患者さんの抗菌薬の選択や、主治医が抗菌薬選択に悩む場合に助言します。抗菌薬を適切に温存し、子どもを耐性菌から守ることが私たちの使命です。

次世代に輝ける小児科医を育てます

当センターでは、小児科専門医をめざす医師(専攻医)の教育を行っています。日本小児科学会は専門医として、①子どもの総合診療医、②育児・健康支援者、③子どもの代弁者、④学識・研究者、⑤医療のプロフェッショナルの5点で、到達すべき目標を掲げています。

少子化が進み、予防接種で感染症が減少し、喘息(ぜんそく)などのアレルギー疾患の治療・予防が発展した今、小児科医の役割は、ただ「子どもの病気」を診るのみでなく、子どもが健康に育つために体だけでなく心理、社会的な面にかかわることへと変わりました。

専攻医は、小児の専門各科もローテーションしながら、専門家が何を意識して診療しているか、専門家に相談すべきタイミングなど、他病院では学びづらいことも経験します。また、全国の他の小児専門医療施設や小児総合診療科の仲間と定期的に勉強会を行い、これからの小児科専門医に必要な研修が受けられるようにしています。例えば「子どもの代弁者」として、子どもや家族、社会が抱える問題を見つけ出し、解決に向けていく力を専攻医の時から培うセミナーを、他施設と協力して行っています。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

肺炎、細気管支炎、胃腸炎、尿路感染症、髄膜炎などの感染症。熱性けいれん。気管支喘息発作。体重増加不良、発達の遅れなどの育児支援。起立性調節障害などの小児心身疾患

当科の特色

  • 入院では、専門科にあてはまらない症状や疾患のお子さんに対して、救急外来から入院した後の治療を行います。
  • 外来では、どの専門科を受診してよいかわからない、さまざまな症状のお子さんの診断・治療を行います(本文参照)。
  • 他の専門科と協力したり、専門科へ橋渡しすることもあります。必要なときは、保健師などと協力して育児支援をします。
この記事をシェアする
この記事の内容