小児重症疾患「小児集中治療室(PICU)とは?」

集中治療科

池山 貴也/集中治療科部長

この記事の内容

子どもが急に小児集中治療室に入ることになったら?

小児集中治療室(PICU)は、病気や外傷により生命が危険な状態にある重症なお子さんに対して、生命維持装置や多くの診療科・看護師の力を合わせて、集中治療を行う場所です。

新生児のICU(NICU)や成人のICUとは異なり、小児の体重は2㎏弱から100㎏以上と幅広く、それに対応する治療デバイス(治療機器)や薬剤投与量の調整が必要となります。

PICUの診療の質を保つためには、500万〜700万人の人口に対してPICUが1つあるのが理想的で、そのため重症患者さんの搬送が必要です(写真1)。

あいち小児ヘリポートへ、ドクヘリ到着
写真1 あいち小児ヘリポートへ、ドクヘリ到着

一般的にPICUでの死亡率は、日本でもその他の先進国でも2%前後です。そのため残念ながら、PICUでもお子さんを看取ることになる場合があります。

小児集中治療医とPICU看護師は、お子さんとご家族にとって一番よい未来を提供できるように、最善・最良の治療を一生懸命に考えて、日々、関係する診療科や部門などと調整を行っています(写真2)。

回診の風景
写真2 回診の風景

子どもにECMO(エクモ)(体外式膜型人工肺)が必要と言われたら?

ECMOは現時点で究極の生命装置であり、心臓や呼吸がまったく機能しなくなっても生命を維持することができます。

首や鼠径(そけい)の太い血管、あるいは心臓や大血管に直接管を入れて血液を体外に出し、酸素や二酸化炭素を調整して体に戻します。そのため、血が固まらないような薬剤(抗凝固薬)が必要で、リスクも高く非常に体への負担が強い治療です。

ECMO開始後の生存率は約60%ですが、装着前の状態や元の病気にもよります。ECMO自体は、生命維持をして治るまでの時間を稼ぐだけの装置ですので、根本的な治療が必要な場合もあります。医師や看護師の説明を聞きながら、ご家族も一緒に治療方針を組み立てていくことが必要です。

病状によっては、お子さんの体を傷つけるだけになってしまうので、ECMOを装着する選択をしないことも少なくありません。

ECMOを装着したまま、違う病院へ移動することはあるの?

ECMOを装着しても元の病気が治るわけではないので、必要な治療を受けられる場所に移動する場合が生じることがあります。また、小児のECMOが安全に始められない施設から、より安全に始めることができる施設へ搬送する間に心停止になる危険性が高いため、専門施設から医療スタッフや医療機器を運んで、その場でECMOを始めることがあります。

そういった場合には、リスクは高いECMO装置ですが、装着したまま、経験のある人員で搬送を行います(写真3)。

ECMO 搬送準備
写真3 ECMO 搬送準備

当センターでは、2021年11月までに、計17件のECMO搬送を行っています。肺や心臓の移植が目的で、専門施設に搬送を行うこともあります。

ECMO搬送チームのメンバーは、集中治療科医師、救急科医師、ICU(集中治療室)/ER(救急外来)看護師、臨床工学士と、数多くの職種を含みます。ECMO装着を開始する際には、心臓外科医か小児外科医もチームメンバーとなります。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

術後や外傷も含む、小児の重症疾患

当科の特色

  • 術後のお子さんが半数以上ですが、病気やケガで重症なお子さんも診療します。
  • 24 時間体制での集中治療が可能です。
  •  小児救命救急センター(ER とPICU)のユニットポリシーとして、「QUEST」を掲げています。

ユニットポリシー

Quality

医療の質を追求する

Undefeated

子どもの代弁者として妥協しない

Education

教育・情報発信を行う

Society

必要な社会資源が投入されるようにする

Teamwork

チームと個人の両方を尊重する

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