子どもの麻酔「子どもへの全身麻酔が心配なのですが?」

麻酔科

宮津 光範/麻酔科医長

この記事の内容

子どもの麻酔は、どこの病院でも同じですか?

多くの病院では、とにかく安全に子どもへの麻酔ができれば十分という観点で麻酔を提供しているようですが、当センターは違います。「こわくない、痛くない、吐かない、あばれない」を合言葉に、快適さを追求した質の高い麻酔を提供しています。それぞれについての取り組みをご紹介します。

こわくない

麻酔前日に手術室見学ツアー(おぺらチャンツアー)に参加してもらい、当日どのような流れになるかを実際に体験できます(写真1)。

おぺらチャンツアーの様子
写真1 おぺらチャンツアーの様子

患者さんだけでなく、ご家族の不安も一緒に解消するように努めています。また、手術当日に使うマスクにつける香り(好きなフルーツ)を自分で選ぶことができます。

YouTube でも、当センター作成の麻酔説明アニメを視聴できるようになっています。

痛くない

私たちは術後の痛みを減らす専門家でもあるので、痛み止めの注射や点滴を組み合わせながら、手術後の痛みが減るように工夫をしています。また、外科系の医師とも協力して、副作用を減らしながら最も痛みがとれるような薬の使い方をしています。

吐かない

気持ち悪くなりにくい新しい麻酔薬を使う麻酔方法を採用したり、積極的に吐き気止めの薬を使ったりすることによって、手術後の吐き気を約80%も減らすことに成功しました。

これまで麻酔を受けて気持ち悪くなったことがある場合は、麻酔科診察でぜひ伝えてください。初めての麻酔でも、患者さん本人が車酔いしやすい場合や、麻酔のあとに気持ち悪くなったことがあるご家族がいる場合は、積極的に対策をとりますので教えてください。

あばれない

私たちの手術室には麻酔後の様子をみる専用の部屋、「PACU(術後回復室)」(写真2)があり、そこで十分に観察を行います。

PACU(術後回復室)の様子
写真2 PACU(術後回復室)の様子

泣いたり暴れたり、困っているお子さんにはPACUで手助けしますので、手術室を出るときには落ち着いているお子さんがほとんどです。

また、海外の小児病院でよく使われている特別な薬を積極的に使うことにより、麻酔のあとに泣いてしまうお子さんや暴れてしまうお子さんが減るように努力しています。

麻酔が効かなかったり、途中で覚めたりしませんか?

お子さんへの麻酔で手術中に目が覚めてしまう確率は、最近の研究では4万人に1人くらいだと報告されています。当センターでの年間手術件数は約2500件なので、16年に1人くらいは手術中に目が覚めてしまうかもしれませんが、それ以外の患者さんは問題なく手術を終えられるという計算になります。

さらに当センターでは、麻酔中に脳波を計測することによって眠りの程度を常に観察していますので、手術中に起きてしまう確率は限りなくゼロに近いと思います。安心して手術を受けてください。

麻酔は子どもの知能に影響しますか?

赤ちゃんに短い時間の手術麻酔を行っても、知能には影響しません。ネズミなどへの動物実験では、全身麻酔で使う薬が赤ちゃんの未熟な脳に悪影響を与える可能性が示されています。一方で、ヒトを対象とした研究は世界中で進められていますが、現在のところ悪影響があることを示した研究結果はありません。

小さな子どもに対して全身麻酔なしで手術を行うことは不可能です。お子さんに必要な手術であれば、全身麻酔を恐れて手術をやめる必要はありません。急ぐ必要がない手術であれば、手術の時期を遅らせることもできます。主治医の先生とよくご相談ください。

診療科紹介

当科の特色

  • 子どもの麻酔を専門とするスタッフ10 人と子どもの麻酔の専門家をめざすフェロー4 人の体制で、手術や検査の麻酔を行っています。
  • スタッフは国内外の小児専門病院や大学病院で小児麻酔を勉強してきた者を中心として構成されており、最近では当センターのフェローを経験してからスタッフになった者もいます。
  • 子どもの麻酔は専門性が高く、大人の麻酔と比べても高い技術が要求されます。そのような特別な技術を身につけるために、若い麻酔科医が全国から集まってくる施設となっています。そのため麻酔科チームの平均年齢は30 歳代と非常に若くなっていますが、その分、とても活気があるチームともいえます。
  • どんな小さな疑問にもわかりやすくお答えしますので、麻酔についてわからないことがありましたら、気軽にお尋ねください。
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