便秘「子どもの便秘で悩んでいます」

小児外科

小野 靖之/小児外科医長 中央検査部長

この記事の内容

便秘で病院に行ってもいいの?

もちろんです!ぜひ相談に来てください。当センター小児外科へは、毎年100人ほどの患者さんが便秘で困って受診されます。

一般的に週2回以下の排便を便秘と呼びますが、肛門の痛みや出血、少量の便もれも、便秘からくる症状かもしれません。

便は腸の中にとどまっていると、水分が吸収されてどんどん硬くなります。肛門近くに固い便がたまると、それを懸命に出そうとして肛門が切れ、出血します。痛みの伴う排便が続くと、次第に排便をがまんするようになり、さらに便秘が悪化する、という悪循環におちいります(図)。

便がたまる→排便時の痛み・出血→便をがまんする→さらに便がたまる→腸が太くなる→便がたまることに慣れる→便を出したいと思わなくなる→さらに便がたまる
図 便秘の悪循環

そして、このような状態が長く続くと、腸は太くなり、便がたまっている状態に慣れてしまい、便秘がとても治りにくくなってしまいます。

便秘は、早く治療を開始すれば、治るのも早いです。どうぞ、「早めに」「気軽に」受診をしてください。

「便が出ているのに便秘」ってどういうこと?

「便が出ているのに便秘なの!?」と驚かれますが、重症化した便秘では便もれをすることがあります。

大きな硬い便の塊がどんどん巨大になり、自力ではもう出すことができなくなると、新しく上から来た便がその巨大な便塊の横をつたって肛門から無意識に出てしまうのです。どろどろの便がいつのまにか下着についている、という訴えが多く、もれた便によって、肛門周囲がひどくあれてしまうこともあります。

便秘の治療を開始すれば、便もれはすぐに止まります。一緒に頑張りましょう!

どんな検査をするの?

まずは触診や超音波検査など、できるだけ患者さんが恐怖を感じない方法で、どれくらい便がたまっているかを確認します。

便秘は、特別な原因がなく排便習慣の問題からくるものがほとんどですが、まれに、便秘から「表」のような病気が見つかることもあります。

●ヒルシュスプルング病(腸管を動かす神経細胞の異常により、肛門まで便やガスを運べない病気で、手術が必要です)、●鎖肛(さこう)(直腸肛門奇形)肛門の形成異常であり、基本的に手術が必要です、●脊髄(せきずい)の病気(脊髄脂肪腫」(せきずいしぼうしゅ)、脊髄係留症候群(せきずいけいりゅうしょうこうぐん)など)
表 便秘から見つかる病気

通常の便秘治療に対する反応が悪い場合や、腹痛・嘔おう吐と など、ほかの症状があるときには、注腸検査(肛門から造影剤を入れ、腸の形や動きを確認する)、腸粘膜の生検、MRI検査、CT検査などを行います。

どんな治療をするの?

便秘の治療で重要なポイントは、「便をやわらかく保つこと」と「毎日の排便習慣」です。

飲み薬で便がやわらかくなると、便を出しやすくなります。そして、グリセリン浣腸(かんちょう)や座薬などを使って、毎日定期的に便を出します。裂肛(れっこう)( 切(き)れ痔(じ) )のある場合には、軟膏(なんこう)を使って痛みをやわらげます。

食生活も大切です。食物繊維の多い食生活を心がけましょう。お子さんがなかなか野菜を食べてくれない場合には、食物繊維のサプリメントなどをおすすめすることもあります。便秘はすぐに治るものではありません。根気強く治療を続けていきましょう。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、頸部腫瘤、頸部瘻孔、先天性食道閉鎖症、胃食道逆流症、肥厚性幽門狭窄症、腸閉鎖症、腸回転異常症、腸重積症、虫垂炎、腹膜炎、先天性胆道拡張症、ヒルシュスプルング病、ヒルシュスプルング病類縁疾患、短腸症候群、便秘、鎖肛(直腸肛門奇形)、肛門周囲膿瘍、裂肛、痔瘻、尿膜管遺残、停留精巣、漏斗胸、肺嚢胞性疾患 など

当科の特色

  • 頸部から胸部、腹部、肛門に至るまで、主に先天的な病気の診断・治療を行います(心臓、骨、脳を除く)。
  • 小さなお子さんの体に負担が少なく、痛みや恐怖を感じさせないような検査や治療を心がけています。
  • 合併するほかの病気、こころのケア、排便ストーマ管理など、専門の診療科や診療スタッフと協力しながら、チームで診療を行っています。
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