尿道下裂(にょうどうかれつ)ってどんな病気?
尿道下裂は、尿道が陰茎(いんけい)(おちんちん)の先端までつくられず、陰茎の下側に尿道口がある先天性の病気です。男児300人に1人の頻度で、未熟児に多いとされています。
尿道口の位置でさまざまなタイプに分類されます(図)。
多くは包皮(ほうひ)が陰茎の上側にフード状にかぶさり、陰茎の下側の包皮は不足していますが、包茎(ほうけい)の状態で尿道下裂があることもあります。陰茎が下向きに曲がることもよくあります。
尿道下裂だと何が困るの?
同年齢のお子さんと外観が少し違います。高度尿道下裂で陰茎の曲がりが強いと、陰茎が陰嚢(いんのう)にかくれることもあります。陰茎が曲がっていると、立って排尿をすることが難しく、将来の性交渉に問題がでる可能性があります。尿道口が大きすぎて排尿時に尿線が散ることや、尿道口が小さくて排尿に時間がかかることもあります。
どんな治療をするの?
尿道下裂の治療は手術です。陰茎をまっすぐにすること、排尿に問題のない尿道を陰茎の先端までつくること、外観に違和感がない状態にすることを目標とします(写真)。
手術には全身麻酔が必要です。生後5〜6か月以降おむつがとれる3〜4歳頃までの手術をお勧めしていますが、成人までいつでも手術はできます。
本人の陰茎周囲のものを使って尿道をつくりますので、異物は入りません。亀頭(きとう)・陰茎が小さい場合は、手術の前に男性ホルモンを月1回、3か月ほど筋肉注射して陰茎を大きくしてから手術をすることが、世界的によく行われています。尿道口が陰茎の先端近くにあって陰茎の曲がりがなければ、立位排尿や性交渉に問題はなく、外観が気にならなければ、手術せずに様子をみることもできます。
尿道下裂手術は、手術後の合併症が多い手術です。つくった尿道に孔(あな)があくと、尿線が2本になったり尿が孔からぽたぽたもれたりします。つくった尿道が狭くなると、力んで排尿したり、排尿に時間がかかったりします。つくった尿道が膨らむ(憩室(けいしつ)こともあります。
合併症によっては追加の手術が必要です。つくる尿道が短ければ合併症は10%以下ですが、長い尿道をつくると、合併症が20~30%と多いことが知られています。合併症をなくすように工夫され、尿道下裂手術は300種類以上あるといわれています。
当科でも尿道下裂のタイプに合わせて、数種類の手術法の中から一番合うと思う方法を選択しています。また、陰茎の曲がりが強い場合には、二期手術(1回目に陰茎をまっすぐにする手術、2回目に尿道をつくる手術)を選択する施設が世界的に多いですが、当科では、できるだけ1回で手術を終える努力をしています。トラブルが起きたときに対応可能な、経験のある施設で手術を受けることをお勧めします。
手術のあとは問題ないの?
10歳頃までは、亀頭がみえている点で同年齢の男児と外観が少し違いますが、思春期以降はあまり違和感のない外観になります。つくった尿道は体とともに成長しますので、手術後問題がなければ、大人になって尿道をつくりかえる必要はありません。陰茎の長さや太さに問題はないことも多いですが、尿道下裂のない男性と比べて、陰茎の長さの平均値は短い傾向にあります。立って排尿できれば、性交渉も機能的には問題ありません。
時に、体が大きくなって尿量が増えると、排尿に時間がかかったり、成人になってから突然尿道が狭くなったりすることがあります。思春期に陰茎が大きくなって、新たな曲がりがでることもあります。中学校卒業頃までは定期的に経過観察をしており、成人になっても尿道下裂に関連したトラブルには対応しています。
診療科紹介
当科で扱う主な疾患
水腎症、巨大尿管、膀胱尿管逆流、尿管瘤、異所性尿管、神経因性膀胱、尿道弁・狭窄など尿路の先天異常、尿路感染、昼間尿失禁、夜尿などの尿路の症状、停留精巣・遊走精巣、陰嚢水腫、包茎、尿道下裂、急性陰嚢症、陰核肥大、陰唇癒合、泌尿生殖洞、腟閉鎖、性分化疾患などの性路の病気。病気によって腎臓科や小児外科と共同で診療するほか、二分脊椎は脳神経外科・整形外科・WOC ナース、性分化疾患は内分泌代謝科・心療科・看護師を中心に、チームで診療を行っています。
当科の特色
- 愛知県立ですが、東海地区の近隣県や北陸方面の患者さんも数多く診ています。
- 年間手術件数のうち、尿道下裂形成手術が1/4を占め、尿道下裂手術件数は国内で上位にあります。
- 国内外の小児泌尿器科医と交流をもって、最新知見をとりいれた診療をしています。