心臓カテーテル検査・治療「心疾患の診断、病状評価、治療について」

循環器科

安田 和志/小児心臓病センター 副センター長

この記事の内容

心臓カテーテル検査って何ですか?

カテーテルとは、検査や治療を行うための柔らかく細長い管のことで、これを脚のつけ根や首の血管から入れて、心臓へ進めます。目的に合わせて静脈のみ、動脈のみ、静脈と動脈両方から、心臓の各部屋(心房、心室)や心臓につながる血管(大静脈、肺動脈、肺静脈、大動脈など)までカテーテルを進め、各部位での血液中の酸素濃度および血圧を測定して、最後に造影剤を投与しながら、放射線撮影を行います(写真)。

心臓カテーテル検査の様子
写真 心臓カテーテル検査の様子

弁や血管の狭さの程度、逆流の程度、心臓の形や動き具合、心房や心室の壁に穴が開いているか、その穴による心臓の負担はどの程度か、肺の血圧が高いかどうか、血圧が高い場合、流れる血液量が多いことが原因なのか血管が硬いことが原因なのかなど、多くの情報が得られます。酸素や薬剤への反応性を調べることもあります。それらの情報をまとめて、心疾患の診断あるいは病状の程度を評価します。

最近ではエコーやCT、MRIなど、体への負担の少ない優れた画像診断装置がほかにもありますが、病状把握に血圧情報が必須の場合は、心臓カテーテル検査を行う意義が高くなります。さらに特殊な検査として、心臓内での電気の流れ方を調べる心臓電気生理検査や、心臓の筋肉組織の一部を採取して顕微鏡的に調べる、心内膜心筋生検(図1)も行っています。

劇症型心筋炎の心筋組織像
図1 劇症型心筋炎の心筋組織像

カテーテル治療ってどんなことするの?

狭い弁や血管を拡げたり、余分な血管などを塞ふさいだりすることで、体の負担を取り除いたり軽くする治療を、カテーテルにより行います。「拡げる」目的で用いられるのは、バルーンとステントです。

バルーンは文字通り風船で、狭い部分およびその前後の血管径を参考にして、バルーンのサイズ(直径2〜25㎜ほど)を決定します。カテーテルの先端についたバルーンを縮めた状態で、狭い部分まで進めます。位置を決めたら、バルーン内に高い圧力(1・5〜20気圧ほど)をかけてバルーンを拡げることで、狭い部分を内側から拡げます。拡げた後はバルーンを元通りに縮め、カテーテルを抜去します。胸を開く外科手術よりも体への負担が小さく、体内に異物が残らない点でも非常に優れていますが、効果が一時的で繰り返し行うこともあります。

一方、ステントは細い金属でできた網目状の筒です。バルーンの外側に縮めたステントを装着して、狭い部分まで進めます。慎重に位置を決め、バルーン治療と同様に高い圧力をかけると、バルーンと同時にステントが筒状に拡がり、血管の内側から狭い部分を拡げることができます。バルーンは元通りに縮めてカテーテルを抜去しますが、ステントは拡がったまま病変部分に残るため、高い拡張効果を示します。しかしステント内側に膜が張り出してきて再び狭くなることや、体の成長に合わせてステントは拡がらないことが、成長期の小児患者さんでは問題となります。

「拡げる」治療の対象疾患は、肺動脈弁狭窄(はいどうみゃくべんきょうさく)(図2)、末梢性肺動脈狭窄、大動脈弁狭窄、大動脈縮窄(だいどうみゃくしゅくさく)、肺静脈狭窄(はいじょうみゃくきょうさく)・閉塞(へいそく)、上大静脈狭窄、人工血管吻合部狭窄(じんこうけっかんふんごうぶきょうさく)、心房間交通依存性心疾患、動脈管依存性心疾患などです。

バルーン肺動脈弁形成術
図2 バルーン肺動脈弁形成術

「塞ぐ」目的で用いられるのは、コイルや閉鎖栓(へいさせん)です。

コイルは、細くて柔らかい金属製のひものようなものです。カテーテル内ではほぼ一直線の形状ですが、カテーテルの先端から出ると、くるくる、くねくねと立体的に巻き上がって金属の塊になり、余分な血管を塞ぎます。

閉鎖栓は細い金属繊維を編み込んだもので、カテーテル内では棒状に畳まれますが、カテーテルの先端から出ると、形状記憶合金のように立体形状になり、血管や穴を塞ぎます。

血管の形やサイズに合わせて、適切なコイルまたは閉鎖栓を選択します。コイルも閉鎖栓も余分な血管や穴を塞ぐことで、体の負担になっている血液の流れを遮断して、治療効果を発揮します。「塞ぐ」治療の対象疾患は、動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)(図3)、心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)、体肺側副動脈(たいはいそくふくどうみゃく)(図4)、静脈-静脈シャント、門脈体循環(もんみゃくたいじゅんかん)シャント、肺動静脈瘻(はいどうじょうみゃくろう)などです。

閉鎖栓による動脈管閉鎖術
図3 閉鎖栓による動脈管閉鎖術
体肺側副動脈に対するコイル塞栓術
図4 体肺側副動脈に対するコイル塞栓術

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

先天性心疾患全般、心筋炎(劇症型、急性、慢性)、心筋症(拡張型、肥大型、拘束型)、肺高血圧症、不整脈、川崎病冠動脈瘤、重症心不全、フォンタン術後症候群、その他小児の心臓病

当科の特色

  • 東海3県唯一の小児専門病院としての役割を担うべく、多岐にわたる子どもの心疾患を受け入れています。
  • 上記対象疾患の診断、病態把握、内科的治療、カテーテル治療を行います。
  • 外科的治療適応については、心臓血管外科と何度も検討を重ねて方針決定し、最善の治療法を提案します。
  • 胎児~新生児心疾患は産科および新生児科と、緊急性の高い重症心疾患は救急科および集中治療科と密に連携しています。
  • その他小児専門内科系、外科系診療科とともに包括的診療を行い、療養環境にも配慮して、保育士(ホスピタル・プレイ・スペシャリスト)が入院生活をサポートします。
  • 多角的、集学的な診療チームを形成し、質・量ともに高度な医療を提供しています。
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