先天性心疾患って?
心臓は、細長い筒状の組織(原始心筒といいます)が曲がって、ねじれて、つながって、くびれて別れて移動して閉じることで形作られます。なんだか複雑ですね。
こうしたプロセスは、胎生3〜8週頃に進みます。早い段階で心筋収縮がみられるようになり、血液が流れ始めます。お母さんのお腹(なか)の上から、エコーを使って心拍がみられる頃には、心臓のほとんどの構造が出来上がりつつあるのです。そして、生まれる瞬間に劇的に変化して完成です。
このような複雑なプロセスを経るためでしょうか、生まれたときから赤ちゃんが持っている疾患のなかで、いちばん多いのが先天性心疾患といわれています。
心臓が形作られる過程のなかで、なんらかの不調が先天性心疾患につながります。うまく曲がらなかったり、反対にねじれたり、別の場所に繋がったり、くびれ方がアンバランスだったり、移動しなかったり、閉じなかったりです。
通常の血液循環は、体から還ってきた血液がそのまま肺に送られ、肺から戻ってきた血液がそのまま体に送り出される、一方通行の循環(直列循環といいます)です。それに対して、どこかで血液が混ざり合う(左右短絡といいます)並列循環が先天性心疾患の大部分を占めています。そして、複数か所の不具合が一度に見つかることも少なくありません。
どうやって治療するの?
心臓はひとときも休むことなく働いている臓器です。少しのあいだ休むだけで、大変なことになります。そのため、心臓を手術することはとても難しく、近年まで、外科医がなかなか手を出せない領域でした。この問題を解決するためには、心臓を手術しているあいだ、機械で血液の循環を維持することが必要になります。それが人工心肺装置です。
人工心肺の基本的なしくみは、体から還ってきた血液を人工の肺に通して酸素と二酸化炭素を交換し、この血液を人工の心臓(血液ポンプ)を使って体に送り返す装置です。さらに、心臓への血流を遮断して心臓のなかを空っぽにし、そのあいだ心臓には心筋保護液を投与して、一時的に心臓を止めて手術を行います。このようにして良い視野をつくり、正確な手術を実践します。
手術によっては人工心肺を使用しなくても可能な場合や、心臓だけでなく体全体を冷やし、全身を冬眠状態にしたうえで、循環停止で行う手術もあります。それぞれの状況に合わせて最適な方法を選択し、術式を組み立てていきます。
こわくない?
このように、複雑な構造をしている心臓にメスを入れ、それを作り直すのが心臓手術です。多くの手術では、血液の循環を機械に任せ、一時的に心臓を止めて行う必要があります。決して、簡単なことではありません。
それでは、安心安全に手術を行うためには、どうすればよいのでしょうか?私たちは、各分野のエキスパートが集まり、協力しあって医療を作り上げていくことに答えを求めます。
心臓血管外科と循環器科は小児ハートチームとしてまとまり、「小児心臓病センター」として、それぞれの得意分野で力を発揮しています。麻酔科や集中治療科、救急科、新生児科を含む周産期部門には、小児医療のスペシャリストが揃っています。さらに、保育士とともに、お子さんの心理面にも配慮して、心の負担の軽減にも努めています。
まだ心配ですか?お子さんに心疾患があると言われたら、まずは一度、当センターを見にきてください。
診療科紹介
当科で扱う主な疾患
先天性心疾患全般、小児期の後天性心疾患全般、重症心不全(小児補助人工心臓)、不整脈(ペースメーカー)、ECMO 手技
当科の特色
- 心臓だけでなく、全身の状態を的確に把握します。
- 小児心臓病センターと新生児科が一丸となって治療戦略を立て、力を合わせて実践していきます。
- 当センター各部門と協力して治療を進めます。
- わかりやすい説明を心がけ、よくご理解いただいたうえで治療を行います。
- お子さんの気持ち、心理面にも配慮した医療を心がけています。
- 新しい術式や知見を医学誌に発表することで、高い評価を得ています。