新生児に治療が必要な病気「新生児科ってどんなことをする科?」

新生児科・NICU

河井 悟/新生児科医長

この記事の内容

新生児科に入院する患者さんはどんな病気なの?

当センターの新生児科は、手術が必要な赤ちゃんの治療を専門的に行うため、2016年11月にオープンしました。生まれてすぐに入院が必要になるのは、予定日よりも早く、小さく生まれた赤ちゃん、生まれた後にうまく呼吸ができない赤ちゃん、ミルクが上手に飲めない赤ちゃん、心臓・お腹なか・頭などに病気を抱えた赤ちゃんたちです。

当科では、心臓・お腹・頭などに病気を抱え、場合によっては急いで手術が必要な赤ちゃんを対象として入院治療を行っています。特に先天性心疾患は、当科入院患者さんのなかで多数を占めており、その他に小児外科疾患(お腹の臓器がお腹から出てしまう病気や、消化管が一部狭いあるいは閉じている病気)、脳神経外科疾患(脳や脊髄(せきずい)の病気)、腎じん・泌尿器疾患(腎臓や膀胱(ぼうこう)の病気)があります(図1)。

循環器疾患74%(合併疾患あり12%、合併疾患なし62%)、脳神経外科疾患9%、小児外科疾患6%、腎・泌尿器疾患3%、歯科口腔外科疾患1%、その他7%
図1 開設以来5年間の新規入院患者さんの内訳

心臓のみの病気の赤ちゃんも多いのですが、その他の臓器にも病気を抱えた赤ちゃんや、染色体・遺伝子の病気を抱えた赤ちゃんが多いことも、当科の特徴です(図2)。

全身疾患あり全身疾患 35%、なし65%
図2 循環器疾患に占める全身疾患の割合

病気を抱えた赤ちゃんはどんな検査・治療をするの?

生まれてすぐの赤ちゃんは未熟な部分が多く、検査のみでも調子を悪くしてしまうことが少なくありません。そのため、できるだけ負担の少ない方法で検査を進める必要があります。

赤ちゃんの検査で代表的な検査は、超音波(エコー)検査です。心臓のみならず、頭やお腹も見ることができます。その他にCT、MRI、心臓カテーテル検査、消化管造影検査などを行うこともあります。

なお、最近は出生前診断の技術も向上し、胎児期に心臓超音波検査を行うことで、生まれる前から診断ができる病気も増えてきました。当科では「胎児心エコー認定施設」として、産科と協力して積極的に出生前診断に取り組んでいます。

先天性心疾患に対しては、さまざまな薬を使うことも多いのですが、新生児期には「低酸素換気療法」や「心臓カテーテル検査・治療」を行うこともあります。

「低酸素換気療法」は、空気中に存在する窒素(ちっそ)を空気に加えることで空気よりも酸素濃度の低いガスを作り出し、これを吸入することで肺に血液が流れ過ぎないようにする治療です。当センターNICUでは、安全に低酸素換気療法を行うため、「窒素・空気ブレンダー(写真1)」を用いています。

窒素・空気ブレンダー
写真1 窒素・空気ブレンダー

「心臓カテーテル検査・治療」は、太ももの付け根の血管から細く柔らかいカテーテルと呼ばれる管を入れ、心臓や血管に進めてさまざまな検査や治療を行います。当センターでは麻酔科・循環器科・心臓血管外科・小児外科といった多くの診療科と協力して、手術とカテーテル治療を同時に行う「ハイブリッド治療」を行うこともあります(写真2)。

ハイブリッド治療の様子
写真2 ハイブリッド治療の様子

いろいろな病気があるときはどうやって治療をするの?

いろいろな病気を抱える赤ちゃんの場合、どの順番でどんな治療を行うかをよく考える必要があります。当センターには、医師のみならず看護師・ソーシャルワーカー・理学療法士も含め、小児医療の専門家がたくさんおり、お互いに相談しやすい環境です。一人ひとりにとって最善の医療を提供できるように話し合いを重ねながら、みんなで協力して治療にあたります。

また、さまざまな病気で手術が必要だった赤ちゃんは、手術後もいろいろな治療が必要なことも少なくありません。飲み薬だけでなく、酸素吸入・経管栄養(ミルクをチューブから入れること)・人工呼吸器を必要とすることもあります。ミルクを口から飲むことができないときは、口や鼻からチューブを入れたり、胃瘻(いろう)(胃に栄養を送るため、お腹に穴を開けて管を入れる)をつくったりします。

自分で呼吸がうまくできないときは、鼻から空気を送る呼吸器や、気管切開をして空気を送る呼吸器を用いることもあります。このように自宅で行ってもらう処置を「医療ケア」と呼びますが、在宅支援専門看護師と協力しながら、地域の病院や訪問医師・訪問看護師・地域の保健師などと連携し、退院に向けた調整を行うことも、新生児科・NICUの大切な役割です。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

先天性心疾患(心室中隔欠損症・ファロー四徴症・房室中隔欠損症・大動脈縮窄症・総動脈幹症・両大血管右室起始症・左心低形成症候群・純型肺動脈閉鎖症・三尖弁閉鎖症・エプスタイン病・単心室症・無脾症候群・多脾症候群など)、不整脈、小児外科疾患(食道閉鎖・十二指腸閉鎖・鎖肛・臍帯ヘルニアなど)、脳神経外科疾患(脊髄髄膜瘤など)、泌尿器科疾患(総排泄腔遺残など)、染色体・遺伝子異常など

当科の特色

  • 外科系診療科と協力して、手術が必要な病気の赤ちゃんの手術前から手術後にかけて、全身管理を行います。
  • 産科・循環器科・心臓血管外科と協力して、胎児診断から始める先天性心疾患診療を行います。
  • いろいろな病気を抱えた、治療の難しい赤ちゃんを数多く受け入れ、関連する診療科と協力して治療にあたります。
  • 救急科の搬送チームと協力した、新生児搬送体制を整えています。
  • 補助循環や透析が必要な新生児は、集中治療科と協力して治療にあたります。
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