性分化疾患とは?
性分化疾患は、染色体、性腺、または解剖学的性が先天的に通常と異なる型をとる状態で、「性に関するさまざまな体の発達状態を示す概念」です。出生時から外性器の発達の遅れが目立つ方もいれば、思春期頃になって初めて診断がつく場合もあります。ここでは出生時から外性器の発達が遅れている場合を例に、当センターでの多職種による経時的なかかわり方を見ていきましょう。
濱島 崇(はまじま たかし)/内科部長
性分化疾患をもつ子どもたちやご家族のために
性分化疾患をもつ子どもたちとそのご家族は、出生から成人にいたるまでの成長過程で、人には相談しにくいようなさまざまな悩みを抱えることがあります。私たち看護師は、本人・ご家族と医療者間のコーディネーター役となり、本人や家族にとって何でも話せるような存在として、生まれてから大人になるまで継続して支援を行っていくことをめざします。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。
中山 薫(なかやま かおる)/看護師
1.性別の判別が困難
早急かつ適切な評価、検査、治療とともに、ご家族の精神的・社会的支援が不可欠です。当センターでは、性分化疾患診療の経験豊富な内分泌代謝科医、泌尿器科医、心療科医、臨床心理士、看護師、医療ソーシャルワーカーなどで、チームとして対応しています。
お子さんの状況、性分化のしくみや必要な検査について、ご家族にもわかりやすいように説明します。結果がそろい、説明できるまでには一週間くらいかかりますので、その間、ご家族の心理的なサポートも重視しています。
井澤 雅子(いざわ まさこ)/内分泌代謝科医長
2.性決定
初診時と検査結果がそろった段階で、最低2回はチームのスタッフが集まりカンファレンスを行って、十分に議論をしたうえで、ご家族に性別を提案します。社会的に性別決定が必要な生後14 日までには、ほとんどの例で性別を提案することが可能です。
人にはなかなか相談しにくい状況の中でも、出生届は必要です。出生届を出さなかったり、変更したりしたら、戸籍はどうなるの?など、不安はつきないと思います。社会的な部分で不安なことをお聞きしながら、役所等に確認するなどのサポートを行っています。
小野 里子(おの さとこ)/医療ソーシャルワーカー
性別にかかわる問題はとても繊細です。気軽に周囲に相談しにくい場合もあり、出生時から思春期、成人期年齢にいたるまで、さまざまな悩みや心理的葛藤が生じるのは自然なことです。アセスメント(*)やカウンセリングを通した心理面のサポートを行っています。
* アセスメント 面接や検査などを通して問題を理解すること
守村 麻子(もりむら あさこ)/心理士
3.手術
選択した性別に見合った外性器や内性器にするため、性腺を適切な位置に戻すため、性腺の悪性化予防のためなどに、手術が必要なことがあります。性分化疾患の手術は非常に難しい場合もありますが、当センターでは経験豊富な泌尿器科医が対応していますので、安心してご相談ください。
性分化疾患の病態や手術は複雑なため、わかりやすい説明を心がけています。また、お子さんやご家族の負担がなるべく少なくなるような手術をめざしています。
久松 英治(ひさまつ えいじ)/泌尿器科医長
4.外来管理
年齢や発育段階に応じて、お子さん本人に定期受診の必要性や病態などの説明を段階的に行っていく必要があります。また、思春期年齢からはホルモン治療が必要なこともあります。どの時期に、どのように説明していけばよいのか、説明後のフォローも含め、看護師や心療科医とも相談しながら行っていきます。
子どもの心身の発達度合いや病態の理解の進め方など、親の悩みは尽きません。こういった悩みのみならず、育児にかかわる相談も受けておりますし、ご本人とも日常の話をしながら関係を深めつつ、段階的に知る性の特徴の受け止めや気持ちの整理を一緒に行います。
川村 昌代(かわむら まさよ)/心療科医長
5.成人移行
高校卒業後頃をめどに、病態、治療経過、今後の見込みなどについて、お子さんやご家族の意向に沿って再度説明します。成人移行は、当センターと併診しながら移行していく方法もあり、十分に準備と相談をしながら、移行方法や時期を考えていきます。