小児形成外科「形成外科はどのような治療を行っているの?」

形成外科

森下 剛/形成外科医長

この記事の内容

形成外科はどういう科ですか?

形成外科って何をするところか、ご存じですか?
なかなかわかりにくい科だと思います。英語ではPlasticsurgery です。Plastic は文字通り「プラスチック」という意味もありますが、「自在に形を作る」という意味もあります。この意味のとおり、形成外科では頭のてっぺんから手や足の先まで、あらゆる体の表面を中心に、いたる所の病気やケガを治しています。

そのなかでも当センターでは、生まれつきの病気、あざ、皮膚、皮膚の下の浅いところにできた良りょう性せい腫しゅ瘍ようを扱うことが多いです。

乳児血管腫(にゅうじけつかんしゅ)の治療法は?

乳児血管腫は、国内では産まれたばかりの赤ちゃんの2%程度がもっている、頻度が高い良性のできものです。できものの見た目から、苺状血管腫(いちごじょうけっかんしゅ)とも呼ばれています。治療を行わずに1歳以降自然に消失する患者さんも多いため、以前は治療を行わなくてよいという考え方でした。

しかし、乳児血管腫のなかで急に大きくなるもの、じゅくじゅくしたりするもの、眼や唇などにできたものでは、最適な時期に治療を行えないと、視力の低下、食事が取りにくいなどの機能障害や目立つ傷跡が残る可能性があるため、この病気の10〜20%程度の患者さんにはヘマンジオルシロップ(*)内服療法の適応があると考えています。薬の内服は、開始が早いと効き目がよいことが多いです。

*ヘマンジオルシロップ:血管腫の増殖を抑え、小さくするのを速める働きがある、プロプラノロールを主成分とする薬

内服は約1週間、当センターで過ごしてもらい、心電図などのモニターで心臓の脈拍の異常、血糖が下がりすぎないかなどを確認し、内服量を少しずつ増やして退院としています。

退院後は1〜2か月おきに外来を受診し、最低24週間は内服を続けていただきます。色・形の改善の具合をみながら、必要があればレーザー治療を行います(写真)。

レーザー治療は、安全ベルトで巻いて、目隠しをして行います
写真 レーザー治療は、安全ベルトで巻いて、目隠しをして行います

赤ちゃんの耳の形が折れていたり、丸まっていたり、左右での違いが気になることはありますか。先天的に耳の形に何らかの異常がある子は15〜29%といわれており、そのうち自然に改善する子は30%程度といわれています。つまり、放っていても良くなることは少ないのです。

頭のかたち外来って?

赤ちゃんの頭の形の歪みが気になることはありますか。頭の形の歪みの原因には2種類あり、1つは病的なもの、もう1つは病的でないものです。

病的なものを、頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)といいます。頭蓋骨には、成長するために骨と骨の間に縫合線という隙間があり、赤ちゃんのうちはすべて隙間が開いていないといけませんが、何らかの原因で一部閉じてしまっている状態です。この状態ですと、頭蓋骨が正常に成長できないため、頭の形が歪んでしまうだけでなく、脳の発達に問題が出たり、顔面の見た目にも影響が出たりすることがあります。この場合は手術が必要で、脳の発達のためにも早期に発見することが重要です。

病的でないものを位置的頭蓋変形(いちてきずがいへんけい)といいます。いわゆる向き癖や寝癖によるものです。赤ちゃんは、寝返りをうつまでは基本的にはずっと仰向けの状態でいるため、どちらかの向き癖があると、頭の形が歪んでくることがあります。その場合は、ヘルメット治療で形を矯正できることがあります。整容面の治療になるので保険診療ではなく、自費診療になります。こちらも早期治療の場合に効果が高いため、早期の発見が重要です。

当センターでは、頭のかたち外来については、脳神経外科と形成外科が2015年1月より連携を取りながら診療にあたっています。気になる場合は、頭のかたち外来にご相談ください。

診療科紹介

当科で扱う主な疾患

赤あざ(単純性血管腫、乳児血管腫)、青あざ(異所性蒙古斑、太田母斑)、黄あざ(脂腺母斑)、黒あざ(色素性母斑)、先天性耳介形成異常(耳瘻孔、副耳、耳垂裂、埋没耳、絞扼耳、折れ耳、立ち耳、小耳症など)、顔面・全身の皮下皮膚腫瘍、手足の先天異常(多指〈趾〉症、合指〈趾〉症)、顔面の先天異常(巨口症、眼裂狭小症、頭蓋骨縫合早期癒合症など)、体幹の異常(臍ヘルニアなど)

当科の特色

  • レーザー治療は開院時より継続して行っています。年間のレーザー照射件数は、外来では1,000 ~ 1,200 件程度です。
  • 担当医は2021 年12 月時点では、非常勤医師2人と常勤医師(フェローを含む)2人です。
  • 今後の当センターでのレーザー治療の役割は、外来で治療が難しい①範囲が広い患者さん、②顔面でも眼の周りの患者さん、③年齢などの問題で安静が困難な患者さんを、短期間の入院もしくは日帰りの全身麻酔で対応していくことと考えています。
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